マンホール
「あたし、寝るね。お母さんも早く寝なよ」


お母さんはポカーンと口を開けている。


「茜音…1人で怖くない?お母さんと一緒に寝てもいいよ?」


それはあたしを気遣って言ったのだろう。でも母親と寝る年でもないし狭いから、断っておこう。


「大丈夫だよ。あたし強いもん」


あたしは笑ってみせた。本当はすごくすごく怖いけど、お母さんも怖いはずだ。

あたしが明るく振る舞えば少しは和らぐかもしれない。

それにいざとなればお母さんくらい守れるほどの武術は備えてある。


大丈夫…
大丈夫だよ…ね?


そうは言いつつもあたしの手は震えていた。
< 114 / 116 >

この作品をシェア

pagetop