マンホール
「菊久乃!!」

あたしはハッとして菊久乃の腕を引っ張った。

菊久乃もまた、ハッとしてあたしの顔を見た。


「今の声……」



なんだったんだろう。尋常じゃないくらいの叫び声。


まだ耳がジンジンと痛い。菊久乃はあたしをひっぱると言った。


「助けなきゃ!」



思えば、なぜあたしたちは子供なのに助けようとしたのだろう。

普通なら大人を呼ぶであろう。


だけどそんなことはちっとも思わず、叫び声の聞こえた方に走り出していた。


気づけば菊久乃は全速力であたしの前を走っていた。

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