マンホール
でも怖くて目が開けられない。菊久乃にひじでつつく。

「も…もう行ったかな?」



小声で菊久乃に囁いた。菊久乃は震えながらも



「わ…わからない…。覗く勇気ないよ…」


そんなのあたしだって同じ。気味の悪い音が耳にこびりついて離れない。


「じゃあ、いっせーので、で見よう」


ごくりと生唾を飲む。菊久乃は頷いた。でももし覗いて犯人がこちらに気づいたら…


その後は考えられなかった。かき消すように怖さを我慢して

「いっせーので…」






振り向いた。
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