マンホール
「ところで、事件のことでなにかわかったか?」


イスをこちらに向け、少し軋ませながら座った。


「いえ、なにも証拠がなくて。今のところ第一発見者に聞いてみる以外、手がかりは……」



阪田は言ってはいけないことを言ったような顔でこちらの顔色を伺った。


「茜音か……」



遠くを眺め、ため息をついた。茜音は俺の娘だ。


帰ってきたときは相当ショックをうけていたみたいで口もきかず、すぐに眠りについた。


死体を見て、ショック受けている茜音に

わざわざ話を掘り返すようなことをして傷つけることは避けたい。

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