マンホール
「一昨日はずっと家にいたけど、なにも聞こえなかったよ。ここらへんでなにがあったんだい?」

目をキラキラさせながら、ずいっと顔を覗かせた。
あまり事件の詳細を話すわけにもいかないので適当にあしらうことにした。


「いえ、大した事件ではないんですよ。ただ、物騒なので気をつけてください」


はははとごまかして、足早に立ち去った。

おばさんは「お茶を出すから教えてよ」と後ろで叫んでいたが、聞こえないフリをした。



「それにしてもおかしいですね」

田坂は眉間にしわをよせ難しい顔をしてる。さっきの家の女もだが、近所の人が叫び声を聞いていないなんて…。
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