マンホール
死体は鑑識にもわからないほどにぐちゃぐちゃだったため、身元も不明だし、男か女かもわからない。

この調子じゃ犯人の追求は難しいだろうな…


「藤東さん」


不意に呼ばれ、はっと我に返る。


「見てくださいよ、あれ」



田坂はなにかを指さしている。俺はその指先を見つめる。



「なんだ、あれは…」



ビルの大画面の液晶にはマンホールだけが映っていた。


ザーッと言う音とともに、マンホールはゆっくり開く。

街中の人々が足を止め、液晶を見つめた。
それは異常とも言える静けさだった。
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