マンホール
一人っ子政策が開始されてから5年後─────





日本のどこかのちっぽけな病院から産声が聞こえた。




「おぎゃゃゃぁぁああ」




元気よく泣き出す赤ちゃん。笑顔がこぼれる母、琴美。


だが医者や看護士たちは浮かない顔つきだった。



看護士に抱かれている我が子をよく見ると






その子は






いや、その子たちは





双子だった。





二人いたのだ。




琴美も思わず顔がこわばった。



二人のどちらか一人は役所の人に殺される。



命の誕生とともに自分の子には死が迫っていた。

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