マンホール
駆け出した時だった。




「ミィーツケタ」




クスクスと笑うような気味の悪い声が暗い闇に響いて耳まで届く。急に力が抜けてその場に立ちすくんでしまった。



「ぁ………あ……」





怖さで震えてるのがわかる。だけど足は動かない。
目は閉じることなくそいつを見つめたままだ。だんだんこちらに近づいてくる。だがその形は分からずぼやけている。





「チャント、オメメヒライテミテマシタカ?」




俺をあざけり笑うようにそいつは聞いた。俺はつばをごくりと飲み込むのが精一杯だ。
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