マンホール
一瞬だけ手をとめ、菊久乃を見つめる。菊久乃はやめたほうがいいと言うように首を横に振った。


だけどあたしはその優しい手を払いのけ、マンホールの蓋を退かせることに集中する。


胸はあの事件の時のように高く波を打つように鼓動の音が聞こえる。


ドクンドクン…



マンホールの蓋が開き、少しずつ、中が見えてくる。中は暗いので目を凝らして見る。


ようやく暗いのに目が慣れ、中がぼんやり見えてきた。



なにか落ちている──────────


もう少し目を凝らして見るとゴミ袋だった。中になにか入っている。マンホールの中はそんなに深くもないので中に入って取ろうとした。
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