マンホール
「住田」



細く透き通るような声が耳に入る。それは響くというよりもまっすぐに千夏の耳に入ってきた。声のするほうを振り向く。


大島が立っていた。千夏は驚かなかった。もともといた人間なのだから驚く理由なんてない。



千夏は駆け寄る。大島はそこから動かない。クールなその顔は笑っているように見えた。


「大島。どこに行ってたの?」


いつものように話しかけた。大島からの返事はない。千夏は少し疑問に思う。


大島はなぜだか少し透明に見える。目の錯覚かと思い、目をこするがどうやら錯覚ではないらしい。
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