マンホール
次の瞬間






冷たい体に引き寄せられた。それと同時に鈍い痛みが襲った。


皮膚と筋肉を貫通するような音も聞こえたような気がした。


「大島…」


大島を見上げる。大島はナイフを持ち笑っていた。だが、目からは涙が出ていた。おかしくて仕方ないというような笑い声だった。


その涙は悲しくて流しているのかおかしすぎて流しているのかわからない。ただナイフを持って笑っていた。


千夏は刺された胸元あたりを触る。生暖かい感触が手に伝わる。心臓の音が聞こえる。次第に大きくなる。大島は穴のあいた千夏の胸に手を突っ込んだ。
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