ショート・ミステリーズ!短編集その1
瀬戸はマリアの
そばで腰を
かがめると、
蓋を空けた
缶詰めを差し出した。

なんと、
キャットフード
だった。

「ほら、お食べ」

正常とは思えない
瀬戸の行動。

マリアは
体を起こした。
彼女が動くたびに
鎖がガチャガチャ
鳴る。

かつて
美しかったであろう、
彼女のワンピースは
シワだらけ。

所々に
血がにじんでいた。

体育座りをした
マリアは
蚊の鳴くような声で
言った。

「もういや……。」
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