Adagio-四音の奏-
谷口碧海は、背がスラリと高く、髪は茶色がかったショートミディアム、顔は美術室にあるデッサン用の彫刻にちょっと似てる。
そんな容姿の持ち主がバイオリンを構えた姿は、当たり前のように綺麗で女子生徒のファンも多い。
でも、僕は碧海のパーツの中で最も美しい部分をあげろと言われたらは彼の指と答える。
長く細くしなやかなそれは…天が僕には与えてくれなかった物だ。
その指先からは、いつも至上の調べが奏でられている。
そう…。
彼は、校内の教師達が全員最高評価をつける程の才能を持つ奏者なのだ。
なのに…。
僕は、彼の性格が未だに良くわからない。
へそ曲がりで皮肉屋で、他人に冷たいのかと思えば優しいところもあったりと、この二年間僕は、碧海にいいようにあしらわれている。