Adagio-四音の奏-

「そうかぁ。ウーチャンは感じないか。僕だけなのかなぁ、そう感じるのは。」

彼の質問をはぐらかし、視線を夕日に輝く海へ移す。
キラキラと輝く反射光が瞳の奥に飛び込み、僕はたまらなくなって瞬きした。


「とにかく明後日の終業式の時に、結果は出るよ。そういう僕だって今日は両親に相談しなきゃならないしね。」

「そうだね。」

それから僕たちは、ウーチャンの家があるアパート群まで、並んだままただ黙々と歩いた。
滑稽な程デコボコな二つの影を見つめながら…。

家へ向かう小道の前で”それじゃあ、又明日”と手を振り、去っていくウーチャンの後ろ姿を見送って、僕は再び歩き出した。
片割れを無くした影に視線を落とすと、それはひどく頼りなげで間抜けな感じがした。僕は少し落ち着かない気分になり、家へと向かう足を速めた。