Adagio-四音の奏-

(まったく…。少しぐらい、予備知識を与えてくれたっていいじゃないか。)

心の中で両親に恨み言など言ってみるが、そんなことよりもいつも無関心を決めこんでる碧海が、珍しく他人に興味を持ったって事の方に気持ちが傾く。


(碧海の豹変の方が、僕にとっては大事件なんだけどな。)


「とにかく、今回の合宿にはきっちり参加するから、太一も安心してていーぞ。」

なにやら胸中に果てしない好奇心を抱いた碧海は、何かを企んでいるような笑みを浮かべ、承諾印の押されたプリントを僕に渡すと教室を出ていった。


(まっいいか♪)

今までの彼の起こした騒動の数々を思い出して、僕の口元は思わずほころんでいた。
そして、僕に安堵の視線を投げかけていたウーチャンは左手の親指を立て、ニッと笑った。
これで合宿参加のプリントは3枚、残るプリントは1枚。
松浦悠莉の分だけになった。


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