Adagio-四音の奏-
「姉さんが死んでから、私の両親は変わってしまったの。姉の話をする度に”佳奈には、毎週札幌までレッスンに通わせた。 その上音大にまで進学させてあげたのに、生活の全てが彼女中心の毎日だったのに…それなのにあの子は死んでしまった。貴女は大丈夫よね?キチンとピアノの道を進んでくれるわよね?”いつもこればかり。姉さんがダメなら、次は私。結局私に姉を重ね合わせて、夢を押しつけているだけ。」

やっとの思いで僕に思いを打ち明けた松浦は歯を食いしばり、必死に涙をこらえている様だった。



僕は、彼女に何と声をかけたらいいのだろう。

「松浦…。」

そう言ったきり、続きの言葉が出てこなかった。

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