Adagio-四音の奏-
「良かった!ああ~、本当に良かった!」
思わず僕は、展望室のガラスの天上を仰ぎ安堵の声を漏らした。
その様子に、松浦はクスクスと小さく笑い声をあげた。
やっと、彼女の顔にいつもの明るい表情が戻った。
「太一、いっぱい愚痴っちゃってごめんね。気持ち…少し楽になったよ。話聞いてくれてありがとね。」
そう言うと、松浦は照れくさそうに俯いた。
少し傾いだ彼女の肩で、クルリと巻いた髪の先がフワリと弾んだ。
”じゃあ、先に教室戻るね。”と言うと、松浦はスッと立ち上がり僕に踵を返し、展望室を出ていった。
(松浦、一緒に美瑛へ行こう。)
一人残された僕は、心の中で小さく呟いた。
彼女の返事がyesであることを祈りながら…。