Adagio-四音の奏-
「ところで、ウーチャンは合宿のことでおじさん達に何か言われた?」
「うん。なんていうのかなぁ…僕自身は進学のこともそろそろちゃんと考えなくちゃいけないし、合宿で成果があれば何か先が見えて来るんじゃないかと思ってるよ。親の方はあの調子だからね。“頑張ってこいよ~”の一言でお終いだったよ。」
「ふーん。僕の所なんか”楽しんでいらっしゃい。柴山くんによろしくねぇ”だもん。遊びに行くんじゃないっつーの。」
「あはは、それはタイチのお母さんらしいや。」
ウーチャンはおかしそうに一頻り笑うと、急に僕との会話に興味を失ったのかアディダスのエナメルバッグから雑誌を取り出すと、ページをパラパラと捲りだした。