Adagio-四音の奏-
「ねぇ、柴山先生の印象はどうだった?」
最初に口を開いたのは彼女だった。
「どうって…イメージとは随分違っていたなー。もっと繊細な感じで演奏家タイプの人かと思っていたから。」
「そうね。確かにそんな感じじゃないよね。どっちかというと農家のおじさんとかペンションのマスターみたい。」
”ふふふっ”と笑いながら彼女は続けた。
「でも、なんて言うのかなぁ…柴山さんの目が、すごく穏やかで、私の中のわだかまりまで見通されているような…。とても不思議な印象だった。」