Adagio-四音の奏-
(うわっ、碧海ってば随分気合入ってるなぁ。この豹変ぶりって…。)
碧海の態度に驚きながらも、僕たちは教室に入ると各々の楽器を取り出し、丁寧に音を合わせた。
そして…僕たちの演奏は始まった。
流れるような1楽章が終わり、2楽章、3楽章…最終章のロンド。
僕たちは夢中で音を重ねていった。
全てを演奏し終えたとき、僕たちはグッタリと疲れ果てていた。
特に碧海は、指が硬直して弓を取り落としそうになった程だった。
「素晴らしい演奏でしたよ。高校生のレベルで良くここまで仕上げたね。」
柴山先生は手を叩きながら、満足そうに頷いた。
僕らはホッとした表情で顔を見合わせ、微笑み合った。
かれども、彼が続けた言葉に僕たちは息を飲み笑顔はそれぞれの顔にベッタリと張り付いたまま行き場を失った。