Adagio-四音の奏-
「それは、僕が言うべきことじゃない。君たち一人一人が見つけるものじゃないかな?レッスンはまだ始まったばかりだ、ゆっくり探すといい。今日はこれでお終い。」

そう言うと、柴山先生は教室を出ていった。
後には、呆然とした僕たちだけが取り残された。


「参ったね…。レッスンをつけて貰えないんじゃどうしようもないや。」

浩史は肩をすくめてビオラを片づけ始めた。
松浦もスコアをまとめると僕らに”お先に。”と声をかけて出ていった。


「碧海…。どうする?」

僕は、最高に不機嫌そうな表情の彼に話しかけた。

「…。」

当然のように返事はなかった。

「それじゃ、後でね。」

碧海の背中に遠慮がちに声をかけ、僕も教室を後にした。

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