Adagio-四音の奏-

「…あ。」

駐輪所へ着くと、松浦がいた。

「タイチも気分転換?」

「うん。なんだか最初のレッスンから出鼻をくじかれちゃって、イライラしちゃってさ。」

「じゃあ、一緒に走らない?“哲学の木”っていう有名な場所があるらしいの。行ってみない?」

”うん”と頷いて僕は松浦と一緒にペダルを漕ぎ出した。
青草の匂いを乗せた風が僕たちを包む…。

松浦が柴山先生に貰っていた地図を見ながら、思いの外きついアップダウンのある道を走り、僕たちは”哲学の木”と呼ばれる木が立っている畑を見渡せる丘に着いた。
僕たちは、牧草ロールにもたれ掛かるようにして腰を下ろした。
目の前に広がる畑の真ん中に、斜めに傾いた一本の木が生えていた。


…あれが”哲学の木”・・・。




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