Adagio-四音の奏-
「柴山先生にはバレちゃったなー。私のピアノに対する気持ち。タイチに話してから気が楽になって…随分吹っ切れたと思っていたんだけど、やっぱり演奏に出ちゃったのかなぁ。」
僕は、木を見つめたまま話し出した松浦の横顔を見つめた。
「…実はね。屋上で話をした日の夜にね。姉からの手紙を読んだの。」
「お姉さんの手紙って…。」
「姉は、私たちに何も言わずに死んでしまったでしょ。何も残っていないと思っていた。それがね…姉の誕生日に、私宛に手紙が届いたの。差出人は姉の恋人だった人。姉は死ぬ前に彼に手紙を送っていたのね。でも、私は手紙の封を開けることができなかった。真実を知るのが怖くて…。でもね、タイチが励ましてくれたからやっとそれを読むことができた。」
「…。」
僕は、何も言えなかった。
かける言葉が見つからなかった。
僕は、木を見つめたまま話し出した松浦の横顔を見つめた。
「…実はね。屋上で話をした日の夜にね。姉からの手紙を読んだの。」
「お姉さんの手紙って…。」
「姉は、私たちに何も言わずに死んでしまったでしょ。何も残っていないと思っていた。それがね…姉の誕生日に、私宛に手紙が届いたの。差出人は姉の恋人だった人。姉は死ぬ前に彼に手紙を送っていたのね。でも、私は手紙の封を開けることができなかった。真実を知るのが怖くて…。でもね、タイチが励ましてくれたからやっとそれを読むことができた。」
「…。」
僕は、何も言えなかった。
かける言葉が見つからなかった。