Adagio-四音の奏-
胸が苦しい。
「手紙を読んで、決心が着いたの。私のピアノは高校でお終い。私は姉のようには生きられないから。この一年間ピアノを憎んで嫌いになろうと思った。だけどできなかった。結局は大好きなのよね。だから今度は与えられた道を親の夢のために進むんじゃなくて、心から楽しめるように自由にピアノを弾いていきたいの。だから…音大には進学しない。」
そう一気にしゃべり終えると、松浦は大きく息を吐いた。
「それが、松浦の答えなんだね。柴山先生の言っていた答え…なのかな。」
「うん。」
「そっか…。」
そう呟くと僕も大きく息を吐いた。
暫く僕たちは、丘を渡る風に吹かれながら何も言わず、ただ黙って座っていた。