Adagio-四音の奏-

「将来ですか?両親は僕の進路については特にはふれないし…僕自身今すぐ決めるべき事なのか…正直判らないんです。」

「そうか。亮司も葉子さんも何も言わないかぁ。彼ららしいなぁ。」

「え?」

「彼らは君のことに無関心な訳じゃないよ。君を大切に思い信じているからあえて何も言わない。“過大な期待や応援は君にとってプラスにはならない”彼らはそう考えているんだよ。実はね、かつての僕もそうやって、彼らに世界へ送り出して貰ったんだ。そうでなければ…今の僕は存在しなかったと思うよ。」

そう語りながら、僕を見つめる先生の少し茶色味をおびた瞳はとても穏やかだった。
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