Adagio-四音の奏-
「進むべき道…本当は君には見えているんじゃないのかい?」

「…。」

柴山先生の問いに僕は口を噤んだ。


(道が見えていたって、一歩を踏み出せない事だってあるんだよ。)

自分が歯がゆくて、情けなくて…だから何も答えられない。
そんな僕の肩を軽く叩き、”大丈夫だよ。”と言いながら微笑むと柴山先生はトマトのカゴに手をかけた。
僕も急いで彼の持つカゴのもう一方の持ち手に手をかけた。
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