Adagio-四音の奏-

「雨が酷くなって来たな。そろそろ戻ろう!」

先生が反対側の畝から叫んでいる。
僕らは頷いて道具を片づけ、先生にペコリとお辞儀すると豪雨の中校舎へ向かって走った。
大粒の雨は、激しく僕らの肌を打ちTシャツもジーンズもあっという間にぐしょ濡れになりベタベタと体に張り付いた。

「うへぇ、酷いや。ウーチャン、早く着替えなくちゃ…。」

僕たちは急ぎ足で宿舎へ向かう。


レッスン室の方から、碧海のバイオリンの音色が聞こえる。


「あ、ブラームスのハンガリー舞曲…。」

雨音と絡まりあう碧海のバイオリンの音色は、何故か僕の心をザワザワと波立たせた。

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