Adagio-四音の奏-
「蒼海…大丈夫かな。昨日から元気がないし。心配だな。」
「そうだね、珍しく合宿に乗り気だったからなぁ。しかも世界的なバイオリニストにレッスンを受けられるんだもの。でも、蒼海だけじゃない、僕だってどんなに楽しみにしていたか…合宿がこんなのだなんてちょっとガッカリだな。」
珍しく、浩史が不満を言った。
「ウーチャン…。」
何かを話しかけようと思った瞬間、僕はブルッと身震いした。
濡れた服がどんどん冷えて、体温を奪っていたのだ。
「タイチ、急いで着替えないと本当に風邪ひくよ。」
そう言いながら、浩史も体を震わせると足早に歩き出した。
遠くで又、雷が轟いた。