もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
残り時間はロスタイムを含めて約20分。
ピッチ内のプレー一つ一つにため息と歓声が交錯する。
前掛かりに攻めてくる川崎の攻撃を事ごとく弾き返すトリニータ。
今、このピッチには手を抜く者など一人も居なかっただろう。
それは戦況を見守るサポーター達も一緒だった。
選手達とサポーター達の気持ちは優勝に向かって一つになっていった。
そしてロスタイムが3分と表示されると、その思いは頂点へと達する。
たったの3分がこんなに長く感じたのは初めてだ。
僕は時計と戦況を交互に見ていた。
『ピッ、ピッ、ピーーーッ!』
長い長い90分が今終わった――。
(´・ω・`)
(つ、疲れました・・)
試合終了のホイッスルと共にビッグアイが揺れた。
揺れた感じじゃなく、確かに揺れたんだ。
ゴール裏には紙吹雪が舞っている。
スタジアムの関係者の特別な計らいで実行出来たものだ。
『やったー!』『おめでとう!』
僕はこの歓喜の輪の中にいる事が出来てとても感激していた。
涙に溢れ、声にならない声を張り上げていた。
(´;ω;`)
「ありがとう!感動をありがとう!」
この夜僕らは祝勝会と称して都町へと出掛けた。
大分で1番の歓楽街はトリニータのサポーターで溢れていた。
あちらこちらで「バンザイ」の声が聞かれ、見知らぬ同士が握手を交わす。
この騒ぎに中央署の警官もパトロールを強めたと言う。
だが、幸にも大きな混乱もなく夜は更けて行った――。
11月16日(土)雲 14:04 Kickoff
第43節 水戸−大分 笠松運動公園
前半25分に先制されたトリニータはシュート数20本と怒涛の攻撃を見せるが、水戸のゴールは遠かった。
1-0で敗戦。
同じ日、C大阪は新潟との直接対決を3-0で制し、J1昇格を決めていた。
1位 大 分 勝点91 +32
2位 C大阪 勝点86 +40
3位 新 潟 勝点79 +26
さあ、リーグ戦も残り1試合となった。
しぃちゃんは僕に内緒で田舎の父親を最終戦に招待する事を決めていた。