もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜

初めてアパートを訪れる父親。
一方、初めてではない香織さん親子。
とりあえず居間に座らせ話を聞く事にした。

香織さんの話では、あれから実家に戻り、離婚の手続きをすると共に元旦那を告発した。
裁判所は元旦那に香織さん親子の半径500m以内に近付く事を禁じ、離婚を認めた。
それを受け、香織さんは元旦那の告発を取下げ、元旦那は刑事責任を逃れる事が出来たと言う。

その後香織さん親子は実家に身を寄せ、知人の経営する小さなスナックを手伝い始めた。
そこに常連として通っていた僕の父親と顔見知りになるまでにはそんなに時間は掛から無かっただろう事は想像できた。

香織さんは僕の父親の事を認めると、ここであった事の一部始終を話した。
「大変な迷惑を掛けてしまった」と。

そんな香織さんに父親は、「あの二人の事なら大丈夫だから」と慰めたと言う。

(´・ω・`)
(ちょっと待てよ?だったら、お盆に帰省した時には全部知っていたんだな親父は・・)



更に話は続く。

一時期男性不振に陥ってしまっていた香織さんは、店を訪れる僕の父親に悩み相談をしたりする内に次第に父親の度量の大きさに憧れるようになり、店を訪れる父親を心待ちにするようになっていった。

四半世紀以上も離れている歳の差なんて関係なく、僕の父親に恋い焦がれてしまったと言う。

母親が亡くなってから10年以上の月日を男やもめで暮らしていた父親は、突如として目の前に現れた息子の同級生を名乗る女性に、始めは困惑したものの大して拒む理由もなく受け入れたと言う。

「お盆の時はまだそんな関係じゃなかったから」

父親のちょっとした言い訳が聞けた。

ここまで黙って聞いていたしぃちゃんが口を開いた。

(*^^)
「じゃあ、たまに電話口から声が聞こえていたのは貴女だったんですね?お父さんから付き合ってる人がいるって聞いていたけど、まさかあの時の人だったなんて・・よっぽど縁があったんですね・・」

「話そうとは思っちょったんじゃけんど・・」

父親の二度目の言い訳だった。

香織さんは既にスナックを辞め、父親とあの水槽小屋で一日を過ごしていると言う。

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