もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
エピローグ
2003年6月吉日。
僕としぃちゃんは海の見える教会で永遠の愛を誓い合った。
ライスシャワーを浴びながら、しぃちゃんのブーケは香織さんの手へと渡っていった。
梅雨のこの時期には珍しく、晴れ上がった青空と穏やかな海が僕らを祝福してくれる。
披露宴にはトリニータサポーターの仲間達も駆け付けてくれ、大いに会場を沸かせてくれた。
もちろんサポーターの正装であるレプリカユニホームを着て、両家のコールまで出る始末だ。
しばらくは1LDKのアパートに二人で暮らしていたが、妊娠をきっかけにしぃちゃんの実家に程近いマンションを購入した。
初めての子供は双子の女の子だった。
とても難産で一時は覚悟して下さいとまで産院の医師に言われたが、今では僕の命が危うい位に元気に育った。
三人目は待望の男の子が産まれ、将来はトリニータの選手にするなどと言う親バカ振りを発揮している。
僕らの生活は三人の子供とトリニータで回っている。
ちょっとした喧嘩も九石ドームで仲直りできるし、落ち込んでいる僕を慰めてくれるのは三人の子供の笑顔だ。
しぃちゃんの機嫌はトリニータの成績によって変化する。
調子の良い時にはお酒が余分に出てきたりする。
調子の悪い時の話はここでは伏せておく事にする。
僕はこの家族に出会わせてくれた大分トリニータに感謝している。
もし大分にサッカークラブが無かったのなら、今のこの僕の生活は無かったのだろう、と思わずにいられない。
これからもずっと大分トリニータと運命共同体で暮らしていけたのなら、こんなに素晴らしい事はないだろう。
大分に、地元にサッカークラブがある幸せを噛み締めつつ、僕の物語を終える事にしよう。
これまで僕の物語に付き合ってくれた全ての人と大分トリニータに感謝します。
『本当にありがとう』
おわり。