もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜

鳥栖スタジアムは、細形銅剣をモチーフにデザインされたサッカー専用スタジアムで、日本初の純鉄骨造りの階段スタンドはかなりの角度だった。
その分、目の前はすっきりと開け、迫力がある。収容人数は25,000人。言わずと知れたサガン鳥栖のホームスタジアムである。

(´・ω・`)
(綺麗な良いスタジアムだな)

その急な階段をしぃちゃんはどんどん下って行く。途中で僕が着いて来ているのを確認するように何度も振り返る。

(´・ω・`)
(あ、ほら、前を見なくちゃ危ないですよ・・)

僕は仕方なくしぃちゃんと並んで歩く様にした。
とは言っても狭い通路、僕が斜め前を歩く様な感じだ。

と、しぃちゃんが僕の肩に手を置いた。

「ドキッ」とした。肩に掛かった手からしぃちゃんの体温を感じる。

少し先を歩いていたしぃちゃんの友人達が席を確保し、僕等はそのすぐ後ろの席に着く。
アウェーゴール裏、やや右寄り。

「鳥栖スタ遠過ぎ」とか「暑いねー」とか勝手な事を言いながら何やら荷物をゴソゴソするしぃちゃんと友人達。
ちょっと大きめのバックから出てきたのは青地に黄色い文字で「吉田孝行」と書かれた段幕だった。

(´・ω・`)
(そう言う事ですか、君らみんなイケメン好きですか・・)

しぃちゃんと友人達はその段幕を持ってどこかへと消えて行ってしまった。
僕はみんなの荷物の番をする。

いつも思うんだけど、スタジアムの席に荷物を置いたまま席を離れる人の多さに呆れる。
ここが海外なら「どうぞ持って行って下さい」と言っている様なものである。

僕は一人残されたまま席に腰を下ろした。

続々とやってくる大分のサポーター達。アウェーゴール裏が青く染まっていく。
良く見ればメイン側にもバックスタンド側にも大分のサポーターらしき人達が席を埋めていっている。

(´・ω・`)
(本当に多いな。何人位来てんだろ?・・それにしても暑いなぁ・・)

もう11月の半ばも過ぎようとしているのに気温はぐんぐんと上がっていく。
照り付ける太陽も容赦ない。

そんな事を考えてるうちにしぃちゃん達が満足そうに帰ってきた。

(*^^)
「おまたせー、寂しかった?」

この人はなんでこんな事を平気で言えるのだろう?

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