もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
13:04キックオフ
試合開始直後から圧倒的な運動量で鳥栖ゴールを脅かす大分の戦士達。
FW2トップの船越と吉田がシュートをガンガン打って行く。
「凄い、凄い、凄い」
10,000人の大分サポーター達も既に「押せ押せ、行け行け」ムード。
だが鳥栖も簡単にはゴールを割らせてはくれない。前節までの鳥栖は10位、この試合に勝とうが負けようが順位は変わらない。
同じ九州のクラブとして、目の前で「J1昇格」を安々と献上する気は更々ないようだ。
と、相手ゴール前の混戦から一人の鳥栖選手が抜け出して来た。
左サイドをボールを持ったまま、駆け上がって来る。
背番号2。有村だった。
ヤバイ!もろにカウンターを喰らった。
「戻れ!戻れー!」
悲痛な叫び声が響いた。
フリーのまま中央にクロスを上げる有村。
相手FWが足元でそれを受けると、一旋、振り抜いた。
「ゴール!」
前半12分 鳥栖1−0大分
一瞬、静まり返るスタジアム。
間をおいて、ため息と歓声が交錯する。
(´・ω・`)
(やられた!喉から手の出る程欲しかった先取点を与えてしまった)
「トーリニータッ!トーリニータッ!トーリニータッ!」
懸命に選手達を鼓舞する大分のゴール裏。
しぃちゃんも精一杯の声でコールを続ける。その目からは、今にも溢れ出さんとばかりの涙が溜まってる。
僕は堪らずに大声で叫んでた。
(;`・ω・´)
「トーリニータッ!トーリニータッ!トーリニータッ!」
しぃちゃんが驚いたように僕を見る。
そして、ニコッと笑った。
そう、今の僕に出来る事は精一杯の声で選手達の後押しをする事。
「一緒に戦おうぜ!」
今度ははっきりと聞こえた。
尚も試合は大分ペースで進んで行く。
もの凄い勢いで鳥栖ゴールに襲い掛かる。
それを必死になって防ぐ鳥栖の選手達。
寸前でゴールが割れない。
「ピー!ピー!ピー--ッ!」
前半終了の笛が吹かれた。
ピッチ上に倒れ込む選手が何人かいた。
「死闘」
まさにその言葉に相応しい闘いだった。