もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜

「ゴーーーーール!!」

待ちに待ったゴールが決まった!
FW船越の左足から弾かれたボールが鳥栖のゴールネットを大きく揺らす。
大分サポーターの陣取るゴール裏のすぐ前にあるゴールマウスにボールが弾んでいる。

歓喜の瞬間

ゴール裏が、メインスタンドが、バックスタンドが揺れる揺れる揺れる。

ゴールを叩き込んだ船越がゴール裏まで駆け寄って来るとその喜びは頂点に達した。

「船越っ!船越っ!」

両方の拳を突き上げ、サポーター達の声援に応える船越。

(´・ω・`)
(よし!残り15分でもう1点入れてくれ)

このゴールをきっかけに疲れの見えていた大分の選手達も再び水を得た魚のように動きが良くなっていった。
一方の鳥栖は防戦に強いられ追加点は時間の問題のように感じられた。

その矢先の事だった。
ピッチに大分の選手が一人倒れ込んで動かない。審判が駆け寄る。担架を要求する。どうやらMF和田が足を痛めたようだ。続行は無理と判断した大分ベンチは三木を投入、DFながらも攻撃意識の強い選手である。

大分は再三に渡って鳥栖のゴールを脅かす。シュート数も既に30を超えている。
が、簡単には得点を許してはくれない。
鳥栖の「昇格阻止」と大分の「悲願の昇格」、意地と意地のぶつかり合いである。

一方的に攻めながらもフィニッシュを潰される。時間が経過していく。時間が足りない。

ロスタイム直前の後半44分、ルシアノを投入して全てを託す。

ロスタイムは2分だった。
(´・ω・`)
(時間がなさ過ぎる・・)

しかし諦めている者は誰もいない。ピッチの中にも外にも。

より一層に声を張り、選手を鼓舞するサポーター達。
諦めずに一つのボールに集中する選手達。

(´・ω・`)
(急げ!時間がない!)


「ピー!ピー!ピー---ッ!」



終わった・・。

大分は3年連続で「J1昇格」を目の前にしながら掴む事が出来なかった。

ピッチ上では両チームの選手達が倒れ込んでいる。

ゴール裏のサポーター達もさすがに声を失っていた。

誰かの啜り泣く声が聞こえる。

しぃちゃんは目を真っ赤にしながらもピッチのある方向を見つめていた。

< 24 / 119 >

この作品をシェア

pagetop