もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
僕は立ち尽くしていた。
すると突然に「まだまだ終わってないぞ!」「この試合絶対に勝たせるぞ!」
ハンドマイクから浴びせられた大きな声。
そう、試合は延長Vゴール方式。
15分×2が残っている。
Vゴールでの勝ち点は2である。この試合、勝っても山形、仙台には及ばない。
しかし、「最終戦を勝っ終わりたい!」
この気持ちは選手もサポーターも同じだった。
有終の美を。
僕らは顔を上げた。声を張り、選手達を鼓舞した。
(`・ω・´)
「トーリニータッ!トーリニータッ!トーリニータッ!トーリニータッ!」
だが、延長後半に松橋を投入したものの、試合は動く事はなかった。
大分トリニータの2001シーズンは終わった。
120分の長い戦いを終えた選手達が疲れた身体を引きずる様にしてゴール裏に整列する。
それを大きな拍手で迎えるゴール裏のサポーター達。本当に大きくて暖かな拍手だった。
「最強で最愛の大分トリニータ」
GKの前川は泣いていた。他にも泣いている選手がいた。
「良く闘ったぞ!」
「来年も頼むぞ!」
そう呼び掛けるサポーターの声も震えていた。
僕らはしばらくその場で時間をやり過ごした。観客も疎らになった頃、しぃちゃんと友人達は段幕を片付けに行った。僕はまた留守番だ。
座席に腰を下ろし、俯いていると前方に人の気配がする。
もう帰って来たのか?と思い、顔をあげると、そこにはライターを貸してくれた、あのサポーターの人が立っていた。
(・∀・)
「あんた、良く声が出てたね、すげーよ。とてもゴール裏初めてとは思えんよ」
そう言って、その人は右手を差し出してきた。
声は既に潰れていた。
僕は立ち上がるとその人の顔をじっと見た。そして右手を握った。
(・∀・)
「ありがとう」
(´・ω・`)
「こちらこそありがとうございました」
力強く握手をする。
その人の手は太鼓のバチで出来たタコだらけだった。
(・∀・)
「じゃあ、またな」
そう言って、その人は自分のいるべき場所へと帰っていった。
(*^^)
「今の人・・」
気がつくとしぃちゃんが戻って来ていた。