もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜

ガードマンにお礼を良い、米良方面へ向かう。

T堂H病院へ―――



車の中のしぃちゃんは静かだった。
座席に体を深く預け、右手で僕の左手を握っていた。
とても強く握っていた。

車はわりと混んでなく、15分程で病院へと着いた。駐車場へ車を停める。

(´・ω・`)
「歩けますか?」

(*^^)
「抱っこしてくれる?」

(´・ω・`)
「いや、それは・・」

(*^^)
「あはは、歩けるから大丈夫だよ。どこも悪くないし」

そんな強がりを言って、病院の玄関を入って行く。

受け付けを済ませて外来へ。
僕は外来前の長椅子に腰掛けてしぃちゃんの診察が終わるのを待った。

途中、カルテを持った看護師さんに連れられてしぃちゃんが出てきた。

(*^^)
「ちょっと検査とかあるみたいだから待ってて」

そう言い、突き当たりの部屋へと消えて行った。

10分程して戻ってきたしぃちゃんが僕の隣へ腰掛ける。

(*^^)
「ここで待っててって」

僕らは無言のまま、医師の診察の結果を待った。
静まり返る病院の長椅子で。





「(*^^)さーん。お入りくださーい」

妙に明るい声でしぃちゃんが呼ばれる。僕らの緊張感が一気に解けた。

診察室へとしぃちゃんが入って行く。

しばらくして再度看護師さんが現れ、「(´・ω・`)さんもどうぞ。(*^^)さんが一緒にって」と言った。

(´・ω・`)
(僕が呼ばれるってどう言う事だろ?)

僕は急に不安になった。しかし呼ばれた以上入って行かなくてはならないだろう。

診察室の薄いカーテンを押して中に入る。背中越しにしぃちゃんが僕を見る。しぃちゃんの顔にも不安が見てとれた。

「どうぞ」と医師に椅子を勧められ腰掛ける。
医師のデスクの前には蛍光板があり、そこには超音波で撮られたらしい写真が一枚掲げられていた。

医師が写真を見ながら説明を始めた。しぃちゃんはもう説明を聞いたのだろう、ずっと俯いたままだ。

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