もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
(´・ω・`)
「歩けますか?」
(*^^)
「うん。大丈夫だよ」
駐車場からアパートまでは50m位の距離だ。
車を降り、薄暗くなった道をアパートまで歩く。
しぃちゃんは思っていたよりしっかりしていた。
もう、震えてなどなかった。
今度は僕から手を差し出した。
しぃちゃんは僕に飛び付くようにして手を握る。
アパートまでの距離を二人して歩いた。
途中に小さな公園がある。薄暗い公園には人影はない。
一つある外灯の下にベンチが照らされていた。
アパートの僕の部屋に着くと、いつものように「ただいまー」と声を掛けるしぃちゃん。
誰もいるはずのない部屋に向かって。
しぃちゃんは初めてこの部屋を訪れた時も「ただいま」を言っていた。
1LDKの小さな部屋。
玄関を上がると右手にバスルームとトイレ。10畳のリビングダイニングの奥には6畳の寝室。縦に長い、僕のお気に入りの城だ。
しぃちゃんはリビングに置いてある大きめのソファーに腰を降ろす。
僕は寝室に行くとエアコンのスイッチをオンにする。
部屋の中は冷え切っていた。
リビングに戻りカウンターの奥に据えてある冷蔵庫の前に立つ。
(´・ω・`)
「紅茶入れましょうか?」
やかんに水を容れ、ガスコンロの火を点ける。
本当はビールでも飲みたい気分だったが、とてもそんな雰囲気ではない。
お湯の沸く間にバスルームに向かい、着ていたジャンバーを脱いだ。洗面所で手と顔を洗う。
鏡を見る。その顔は疲れ果てていた。
(´・ω・`)
(しっかりしろ。自分が疲れててどうするよ)
鏡の中の自分に一人呟いた。
バスルームを出てリビングを覗く。
しぃちゃんはじっとソファーに座ったまま微動だにしてない。
僕はしぃちゃんの隣に腰掛け、しぃちゃんの頭をポンポンとした。
(´・ω・`)
「大丈夫ですか?」
(*^^)
「・・ごめんね」
凍えるような小さな声でそう呟くと塞きを切ったように泣き出すしぃちゃん。
僕は堪らず、しぃちゃんを抱きしめた。
(´・ω・`)
「大丈夫、大丈夫ですよ」
僕の腕の中で、しぃちゃんの鳴咽は止まらない。