もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜

しぃちゃんは僕の手を不意に握るとグラウンドに向かって左手の方向へ進み出した。

(´・ω・`)
「あっちって、あの青いシャツの集団がいる所ですか?」

僕はゴール裏に陣取った青い集団の方向を指差して言った。

(*^^)
「そうだよ。私はいつもゴール裏で応援してるの。一緒に行って応援しよーよ」

(´・ω・`)
「ちょっ・・」

ゴール裏。いわゆるサポーターと言われる人の中でも一際熱心な人達が集まる場所。それくらいは知っていた。
しぃちゃんもゴール裏にいる人達と同じシャツを着ている。
僕はと言うとありきたりの白いTシャツに黒いチノパン。


一瞬、足が止まった。




(*^^)
「ん?どしたの?」

(´・ω・`)
「行って下さい」

(*^^)
「え?」

(´・ω・`)
「僕はこの辺で観てますから、しぃちゃんはゴール裏で応援して来て下さい」



風が吹いた。グラウンドを撫でるように。



(*^^)
「そ、そう?あんまり無理に言っても悪いし、じゃあ、あたしも今日はこっちで観ようかな」

しぃちゃんは辺りをキョロキョロ見渡しながら言った。

(´・ω・`)
「いや、しぃちゃんはゴール裏に行って下さい。僕の事は気にしなくて良いですから」

僕はしぃちゃんの手をそっと離した。


(*^^)
「そんな・・、悪いよ。誘ったのあたしだし」

(´・ω・`)
「良いです、良いです。僕はまだあそこに行く勇気はありませんから」




−ピッチ内練習終了の時間です―――。



場内アナウンスが告げる。

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