もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
しぃちゃんは自分の物を僕の部屋に置いたままにはしない。持ってきた物をそのまま持って帰る。
天気の良い日には自分の物と一緒に洗濯をしたりもするが、夕方には綺麗に畳んで持って帰る。
それが礼儀だとでも言うように。
僕らはお互い似たようなジャージに着替えると、再びソファーへ腰を下ろした。
飲みかけの紅茶に手を伸ばそうとした、その時、しぃちゃんはおもむろにソファーの上で正座した。
そしてこっちに向き直る。
(*^^)
「あのね。聞いて」
(´・ω・`)
「はい、何ですか?」
(*^^)
「あたし、早いうちに手術受けるよ。ちょっと怖いけど、手術の痕が残ったりするかも知れないけど、でもやっぱり赤ちゃん欲しいし、病院の先生は簡単な手術だって言ってくれたし、だから、だから・・ 」
しぃちゃんは一気に喋ると「ホゥ」と息をついた。
(*^^)
「それでも・・良い?」
最後は涙目だ。
(´・ω・`)
「はい。それで良いですよ。がんばりましょうね」
僕はしぃちゃんの頭を撫でながら言った。
しぃちゃんは「ウンウン」と頷くと、人差し指で涙を拭う。
(*^^)
「なんか、お腹減っちゃった」
(´・ω・`)
「ほら、だからあれほど言ったのに」
僕は少し考えて、
(´・ω・`)
「さんぱく行きますか?」
さんぱくは近所にある定食屋さんで、独り身の僕は大変にお世話になっているお店だ。
しぃちゃんも何度となく連れて行っている。
(*^^)
「ニラ豚定食食べた〜い」
この一言で決まりだ。
僕らは、さっき入って来た玄関を二人して出る。
(*^^)
「行ってきまーす」
しぃちゃんはこの部屋を出る時に必ずこの言葉を言う。
部屋の中には誰もいないと解ってても。