もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜

(´・ω・`)
「良く寝てますね・・」

お母さんはゆっくり頷くとしぃちゃんの髪を優しく撫でる。
「しぃはホントに手のかからない子供でね、こうして世話をやく事なんて滅多になかった。私の代わりに妹を育てたのはこの子だったようなもんでね」

ゆっくり話し出すお母さん。
お父さんの闘病生活を支えるお母さんに代わってどんなにしぃちゃんが懸命だったか聞かされた。

その時、しぃちゃんが「んんっ」とうなされる。瞼ががピクッとなり、ゆっくりと目が開いてゆく。

お母さんがナースコールのボタンを押す。

(´・ω・`)
「おはよう、しぃちゃん。良くがんばりましたね」

看護師さんがノックをした後、返事も待たずに入ってきた。

「すいません、ちょっと出て貰えますか?」

看護師さんが僕の目を真っ直ぐに見て言う。

(´・ω・`)
「はい。じゃあ談話室にいますから」

お母さんにそう言って病室を出た。

手術は無事に終わった。意識もハッキリしている。後一週間程で退院できるだろう。退院したら―――。

僕はある決意を胸に秘めていた。

談話室にいても別にする事はない。僕は置いてあった雑誌を物色してみたが、女性誌ばかりで興味を惹かれる物はなかった。

イスに腰掛けテーブルの上で腕を所在無しに伸ばしていた。
10分程そうしていると、さっきの看護師さんに「もう良いですよ。面会できます」と声を掛けられた。

再び病室に戻るとお母さんが何やらしぃちゃんに話し掛けている。しぃちゃんは弱々しいながらも会話は成立しているみたいだった。

僕が入って来たのを目に留めたお母さんは「ちょっと飲み物買って来るわ」と言い、すれ違い様に僕の背中をポンと叩き出て行った。

僕はお母さんの譲ってくれたイスに跨がり、しぃちゃんの顔をじっと見た。
布団から少し出ていたしぃちゃんの手を握り、指を絡めると力強く握り返してくる。

(´・ω・`)
「がんばりましたね。2-0の完封勝利ですよ」

(*^^)
「・・うん・・夢見てた・・トリニータの・・」

(´・ω・`)
「僕の夢じゃないんだ」

(*^^)
「あはは・・隣・いたよ・・」

いつもの笑顔とはいかないけど、笑った。

< 47 / 119 >

この作品をシェア

pagetop