もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
白い肌に碧いビキニが映える。
しぃちゃんはこのビキニに「Trinita」と刺繍しようとして断念した。らしい。
(´・ω・`)
(どんだけトリニータ好きなんでしょう)
僕がパラソルの陰に入り、サンオイルを取り出す。
(*^^)
「塗って」
(´・ω・`)
「後ろだけですよ。前は自分でやって下さい」
(*^^)
「ちぇっ・・」
(´・ω・`)
「ちぇっ、て言われても・・」
しぃちゃんの背中にサンオイルを伸ばす。
(´・ω・`)
(あ、こんな所にホクロがあったんだ)
太陽の下で見るしぃちゃんの白い素肌は僕の目には新鮮に映った。
(´・ω・`)
「はい。背中塗り終わりましたよ」
自分で腕やら足やらを塗っていたしぃちゃんは僕の掛けた言葉を合図に海へと走り出して行った。
(*^^)
「とっつげきぃー!」
(´・ω・`)
「!!!ちょ!僕の背中はーー?!!」
僕らは夕方近くまでをビーチで過ごした。
しぃちゃんの乗った浮輪を沖の方まで押して泳いでいた時には、シーモービルの起こした波で危うくひっくり返されそうになったり、砂浜ではビーチボールでサッカーをしたりして充分過ぎる程遊んだ。
遊び疲れて甲羅干しをしていた僕の背中にしぃちゃんが砂で「男」とか書いたもんだから、僕はひと夏「男」を背中に背負うハメになった。
しぃちゃんは何度目かのオイルを塗りながらそっと呟く。
(*^^)
「あたし、お父さんに会いに行きたい」
「お父さん」とは僕の父親の事だ。
僕の父親は漁師の網元に三男として生まれ、中学を卒業したあと、一年放浪生活をし、17歳で漁師になった。
生粋の海の男だ。
その海の男も僕の母親が逝ったのをきっかけに漁師を引退した。
「お前の母親が死んだのは俺のせいかもなぁ・・」
しばらくは口癖のように言っていた。
漁師を辞めたものの、海でしか生きられない父親は漁師相手に魚を売買する小さな商店を構えた。
いわゆる「魚屋さん」とはちょっとニュアンスは違う。
その商店も漁師の仲間のお陰で順調だ。