もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
僕は携帯の目覚ましタイマーをセットしてソファーに横になった。
眠りの霧が僕を包んでいく。
携帯のデジタル音で目が醒めた。身支度を整え、寝室の様子を見る。
二人共、良く眠っていた。起こそうと思ったが、あまりにも良く寝ているのでためらった。考えた揚句の果てに僕は書き置きを残して出掛けようと決めた。
『良く寝ているので起こしませんでした。鍵は新聞受けに戻しておいて下さい』
僕は玄関のドアそっと閉めると部屋を後にした。
その日の業務は比較的楽なものだった。
忙しくしている方が気が紛れて良いのだが、時間を持て余すとつい余計な事を考えてしまう。
昼休みに一度香織さんの携帯を鳴らしてみたが留守電に繋がった。連絡が取れずにいると益々気になる。
しぃちゃんからメールが入る。
『今日の予定、大丈夫ですか?』
うっかりしていた。今日はしぃちゃんと仕事終わりに街へ行く約束をしていたんだった。
婚約指輪のサイズ合わせ。
こんな大事な事を忘れかけていたとは。しぃちゃんからの確認メールがなければ危うくすっぽかしてしまう所だった。
本当、どうかしている。
何度か香織さんに連絡を取ろうとしたものの相変わらず留守電に繋がるばかりだ。
「おかしい、何かあったのだろうか?」
不安な気持ちのまま終業の時間がやって来た。
夕方6時にしぃちゃんとPARCO前で待ち合わせをしていた。
僕が先に着いたようだ。
しばらく街路樹の下で夕日を避けていた。
真夏の街は薄着の女性達で溢れんばかりだ。
思わず目を奪われる。
「何デレっとしてんのかなぁ〜?」
声のした方を見るとしぃちゃんが立っていた。腰に手を当てて。
(´・ω・`)
「!!デレっとなんて・・」
僕が反論しようとすると
(*^^)
「嘘うそ、さ、いこ。あっついねぇ」
(´・ω・`)
(暑いんなら腕なんか組まなくても・・)
僕らはPARCOのジュエリーショップに向かった。
指輪はあらかじめ決めていた。
給料3ヶ月分とまではいかないが奮発した方だ。
しぃちゃんはニコニコしながら指輪をはめていた。