もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
第8章〜氷点〜

ξ゚ー゚)ξ
「ごめんね。迷惑掛けちゃって。本当にありがとう。彼女との事で力になれる事があったらいつでも言ってね」

そう言った香織さん達がパトカーに乗るのを見送って僕はアパートへと帰って行った。




熱いシャワーを浴びながら、全部夢だったら良いのにと思った。



僕は途方に暮れていた。

とても酔う気にはなれないがビールが飲みたかった。

酷い一日がようやく終わろうとしていた。









2002 Jリーグディビジョン2は2ヶ月間の中断を経て開幕していた。
ディビジョン1はこの一週間後に開幕する事になる。

7月6日(土)晴 18:31 Kickoff

第16節 大宮−大分 大宮公園サッカー場

大分は前半14分に吉田のゴールで先制。以降激しい攻撃に耐え、0-1で勝利する。幸先の良いスタートを切った。


7月10日(水)晴 19:04 Kickoff

第17節 大分−川崎 熊本K.Kウィング

平日開催のしかも熊本ナイターと言う事もあって、入場者数は3,000人を少し越えた程だった。

しかしこの日熊本に集まったトリニータのサポーターはラッキーだった。
試合内容は終始圧倒、ファビーニョ1発、アンドラ2発、吉田1発、小森田1発の合計5得点を観れたからだ。
5-0の完封勝利。
熊本K.Kウィングはさぞや盛り上がった事だろう。

僕としぃちゃんはこの試合に参戦する予定で休みを取っていたのだが、依然として僕とは逢おうとしてくれなかった。
仕方なく僕は休みを返上して出勤した。

もちろん一人ででも熊本に行く事は出来たのだが、そうする気にはなれなかった。
と言うか、もうサッカーなんてどうでも良くなっていたのかも知れない。

僕にとってのトリニータはイコールしぃちゃんだった。
しぃちゃんを失いかけている今、とてもじゃないがサッカーに熱くなれるとは思わなかった。


「指輪が出来上がった」とジュエリーショップから連絡の連絡で受け取りに行った。
その夜、僕はしぃちゃんの自宅を訪ねた。
玄関先でお母さんに「会いたくないって言ってる」と言われ、「指輪だけでも受け取って」と言う僕の願いも聞き入れてはくれなかった。

< 67 / 119 >

この作品をシェア

pagetop