もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
しぃちゃんの話では、試合終了後、ゴール裏の段幕やらを片付けたりした後、僕の姿が見えないのに気がついて、慌てて電話をした、との事。
試合後に合流して今日の感想等を聞きたかった、とも言ってた。
僕は既に家路に向かってる事を伝え、また後日、サッカーの話でもしよう、と言って電話を切った。
今日初めて観たサッカーの試合。ゴール裏の人達の応援。
特にサポーターと呼ばれる人達の応援は、今まで僕が知っている野球のそれとは違い、僕の体中に大きな刺激を残してくれた。所謂カルチャーショックを受けた訳だ。
ゴール裏の人達はサッカー観戦に来てるのではなく、グラウンドで闘ってる選手同様に相手チームと闘っていた。その気迫はゴールネットをサッカーボールが揺るがす如く僕の心をも充分に揺らした。
秋の夜空に大きな月が浮かんでいる。帰りは鈴虫が出迎えてくれた。
僕は近所の公園前にある酒屋の自販機で缶ビールを買い、自宅へと帰った。
数日後、しぃちゃんからメールが来た。
この数日間は、やたら仕事が忙しく、あの日観たサッカーの事さえも思い返す事がない位だった。
たった一通のメールに返信する事さえも忘れる位に忙しかったんだ・・・。
それから二ヶ月の時が流れた・・。