もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜

その時、携帯の着信音が鳴った。
友人のまりちゃんからだ。

(*´∀`)
「もしもし、まりですけど、しぃ来ましたよ。どこに行けば良いです?」

僕はまりちゃんにゴール裏に行くように言い、急いで席を立った。

「すぐに見つけますから――」




2階席からの階段を駆け降り、ゴール裏へ。



――そこに立っていた。友人に付き添われるようにして、不安な面持ちで。

走って駆け寄る。驚いたような顔で一瞬僕を見た。

そして俯いた。



僕はまりちゃんにお礼を言い、まりちゃんは「がんばってね」と返し、自分の場所へと戻って行った。

僕らはしばらく無言のままでその場に立っていた。

しぃちゃんは俯いたままだった。僕の方をまともに見ようともしなかった。

(´・ω・`)
「あの・・元気だった?」

僕は努めて敬語を使わないようにした。

(´・ω・`)
「・・メール読んでいてくれたかな?」



(*^^)
「また・・タバコ吸うようになったんだね・・」

(´・ω・`)
(うっ・・口を開いたと思ったら、早速嫌味を言われましたよ)

(´・ω・`)
「あ・・匂う?ごめん・・」



再びの沈黙―――。

周りの人からしてみれば変な二人に見えただろう。
通路でピッチの方も見ずに話をする事もなく向き合っている二人。



その時「ドッ!」とスタジアムが沸いた。
ピッチ内練習にGK岡中が姿を現したからだ。

喧騒に紛れ言った。

(´・ω・`)
「移動する?」

(*^^)
「なんで?」

(´・ω・`)
「いや、ここじゃ話せないし」

(*^^)
「あたしは・・」

(*^^)
「あたしは話しに来たんじゃないよ。トリニータを応援しに来たんだから、どこにも行かないよ」

(´・ω・`)
「あ・・・」



僕はこの人を熱くさせる事が出来るのだろうか?
そう、トリニータよりも―――。

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