もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
僕は彼女の氷を溶かす事が出来るのだろうか―――。
とにかく、このままこうしている訳にはいかない。僕らはゴール裏の空いてる席へと移動した。
中央部分は既に上から下までビッシリだったが、バックスタンド寄りにはまだいくらかの空席があった。
僕らはそこに並んで座った。左コーナーポストが真正面に見下ろせる中段の席。
(´・ω・`)
「何か飲みませんか?」
僕は沈黙に耐え兼ねて口を開いた。
いくらナイターと言えど、8月の夜は蒸し暑かった。おまけにスタジアムの熱気と合わさって不快指数は頂点に達しようとしていた。
(*^^)
「じゃあ、とりあえずビール」
(´・ω・`)
「え・・ビール・ですか?」
(*^^)
「そうよ、悪い?」
(´・ω・`)
「悪くは無いですけど、車で来たんじゃ?」
(*^^)
「まりにここまで連れて来られたの!ほんとにお節介なんだから・・」
しぃちゃんもこの1ヶ月で変わっていた。
スタジアムでビールなんか飲む人ではなかったのに。
しかしこう暑くてはビールでも飲みたい気分になるのは同じだ。
それなら、と僕はすぐ上の売店でビールを2杯買って来た。
1杯をしぃちゃんに渡す。
しぃちゃんは受け取ったコップをしばらく手の中でもてあそび、一口、二口と口をつけた。
ビール、ととりあえず言ってみただけ。そんな感じだった。
こうして座っているとズボンのポケットの膨らみが気になる。
しぃちゃんは気付いているのだろうか。この膨らみの意味を。
気付いているそぶりは無かった。
僕はビールを二口で飲み干すと再び売店でビールを買った。
飲んでもすぐに汗になって出て来る、それくらいの暑さだった。
(´・ω・`)
「メールは読んでくれてましたか?」
酔いも手伝ってか、僕は再度聞いてみた。
(*^^)
「読んでたよ。今日は何した、何食べた、とかのメールでしょ?あの女の人の事は一言も書いてなかった。毎日同じようなメール」
(´・ω・`)
「はは。まあそうなんですけど・・」
(*^^)
「一体何がしたかったの?」
(´・ω・`)
「いや、メールで言い訳をしたくなかった、って言うか・・」