もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
まさか僕はからかわれているのだろうか。
一瞬のうちに色んな事が頭の中を駆け巡った。
しぃちゃんはと言うと少し得意げな表情で薄ら笑いを浮かべていた。
(´・ω・`)
(悪魔みたいな顔でした)
でも僕にはもうそれにすがる事しか出来ない。
負けてしまった時の事は今は考えられなかったんだ。
後は全力でトリニータを応援するしかない。
この試合が僕にとって、『絶対に負けられない試合』となってしまった―――。
そうなればこんな所でじっと座っている場合じゃない。
僕はしぃちゃんの手を取ると、ゴール裏の中央部を目指した。
まりちゃんを探す。
(´・ω・`)
(確かこの辺に居ると思うんだけど・・)
いた!
(´∀`*)
「なになに?もう仲直り出来ちゃった?」
(´・ω・`)
「そんな事言ってる場合じゃなくなりました。この辺詰めれますか?」
席は一つだけしか空いてなかったが、どうせ座るつもりは無い。荷物をどかして詰めてもらった。
ちょっとはみ出しているが問題はないだろう。
僕は一つだけ気になる事を隣に居るしぃちゃんに聞いてみた。
(´・ω・`)
「あの、しぃちゃんはどっちを応援するつもりですか?」
しぃちゃんはニコッと笑ってこう言った。
(*^^)
「もちろんトリニータ!」
キックオフのホイッスルが吹かれた―――。
(*^^)
「今日勝ったらその指輪受け取るよ」
この瞬間、僕と大分トリニータは運命共同体となった。
しかしこの試合、大荒れに荒れるのを僕らはまだ知らなかった―――。
それは早くも前半から起こった。
前半20分、アンドラのFKを体ごとお仕事吉田。
「やった!先制だ!」
スタジアム中の誰もがそう思った。
主審の小川さん以外は。
なんと主審の小川さんはこれをゴールと認めず、FKのやり直しとした。
スタジアム中に起こるブーイングの嵐。
主審に詰め寄るトリニータの戦士達。
不穏な雰囲気がスタジアムを覆う。
もちろんこれには僕もしぃちゃんも激怒した。
僕はあの審判を呼び出して、この試合が僕にとってどんなに大切か説明してやりたかった。