もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
『まだまだ上には行かせないよ』
そんな声が聞こえてきそうだった。
アウェーゴール裏は着々とトリニータブルーに染まって行く。
開始30分前には身動きが出来ない位のトリニータサポーターで埋め尽くされていた。
去年の1万人には及ばなかったが、それでも5千人は居るであろうトリニータサポーターで鳥栖スタジアムをジャクした。
今日の2トップは木島良輔とアンドラージャ。吉田孝行はベンチにいた。ベンチに入れるまでに回復していたのだ。
そして、戦いの時が来た。
序盤から攻めるトリニータは29分。最高の助っ人アンドラージャがゴールをこじ開ける。
ボルテージの上がるアウェーゴール裏。
フラッグが打ち振られ、タオルが舞い上がる。
僕もしぃちゃんもまりちゃんもタオルを振り回し跳びはねて喜んだ。
「このまま行け行け!」
しかしそんなトリニータに鳥栖が牙をむく。
前半ロスタイムの47分。鳥栖のFW森田が目の前のゴールネットを揺らした。
前半終了、1-1。
ハーフタイムを挟んで後半へ。
後半62分、攻めきれなさに業を逃がした小林監督はMF金本圭太を下げ吉田孝行を入れてきた。
久しぶりにピッチに戻って来たエースを大歓迎するゴール裏。
もちろんしぃちゃんは大喜びだ。
試合が動いたのは終盤の80分。一瞬の隙を突かれ、またもや森田にやられた。
残り時間はそう長くはない。このまま終わるのか、と思われた87分。
ゴール前で絶好のFKのチャンスが訪れた。
蹴るのは吉田孝行だ。
吉田はボールをピッチにゆっくり置くと助走の為に距離を取る。
壁は5枚。
静かに走り出し、右足で蹴り上げる。ボールは壁の上を抜け、待っていたDFサンドロの頭にピタリと合った。
『ゴーーーーール!!!』
起死回生の同点ゴールを決めたサンドロはFKを蹴った吉田孝行と抱き合う。
(*^^)
「サンドロ!離れろー!」
(´・ω・`)
(え〜、どんだけ〜?)
ゴールマウスに転がっているボールを抱え、センターサークルに運ぶのは途中出場の浦本賢太郎だ。
(´・ω・`)
(そうだ、時間がない。早く早く)
残り時間はロスタイムを入れてもせいぜい5分程だ。
このままドローで終わるのか?