【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
なんで?どうしてそんなことを言うの?ねえ、ヒロ君……。
頭の中ではすぐに聞けるのに、口からは何の言葉も出てきてくれない。気が動転してたんだ。
「でも、もう大丈夫だからね!僕はヒーローだから、悪いやつらは退治したよ!」
そんなあたしを見て、ヒロ君は付け加えてそんなことを言う。
「そう……なのかい?」
おばあちゃんはまたヒロ君に視線を向けた。まだ悲しそうな目をしていたけれど、退治したと聞いてほっとしたようだった。
「うん!おばあちゃんが作った人形、すごくかわいいんだもん。バカにするやつらがバカなんだよ!へへんっ♪」
「ありがとねぇ、ヒロ君。将来、きっとヒーローみたいに強い子になれるよ」
「うん!頑張る!」
おばあちゃんもヒロ君も、ヒーローの話に花を咲かせながら自然と笑顔になっていた。
だけどあたしは……。
「っ……ふえっ……」
もうあの男の子たちが来ないんなら、わざわざおばあちゃんに報告することないじゃん。
傷つけるようなこと、言わなくたっていいじゃん……!