【ひな祭り短編-2009-】初恋の味はひなあられ。
 
「サキちゃん?」

「サキちゃん?」


おばあちゃんとヒロ君が、急に泣き出したあたしを見て心配そうに声をかけてくれた。


「ふぇ……ふえっ……」


でも、いったん泣き出したらなかなか止まってくれないのが涙で。優しく声をかけられると、もっと出るのが涙で……。


「どうしたの?大丈夫だから。こっちにおいで、おばあちゃんに言ってごらん?」


そんなあたしを、おばあちゃんはベッドの脇に来させて、しわしわの手で頭をなでてくれる。


「お……おばあちゃんには言いたくなかったの!」

「なにを?」

「あんなに一生懸命作ってくれたひな人形、バカにされてたことなんて……」

「そうだったのかい……」

「でも……おばあちゃんのこと大好きなのに……ずっと言い返せなくて……ふぇっ」

「いい子だねぇ、サキちゃんは」

「いい子じゃないよ!おばあちゃんを守れないんだもん。悪い子だよ……」


あたしはおばあちゃんの手の温かさに甘えて、今まで秘密にしていたことを怒ったり泣いたりしながら全部話したんだ。
 

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